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「春にして君を離れ」

  • CATEGORY戯れ言
  • PUBLISHED ON2004/ 03/ 13/ 15:42
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眠いんです。ものすごーーーく……。
確か薬の副作用のところにも、そう書いてありました。
「車の運転をしないように」とか「精密機器の操作をしないように」とか…。
そんなわけで、一足先に夫&息子から貰ったチョコレートなどをほおばりながら
ぼんやりと一日過ごしてしまいました。

主婦って、ある意味天下無敵というか、一家を仕切っている存在です。
お財布を握っているのが夫だとしても、家事&育児はやはり主に主婦の役目という家庭が
多いのではないでしょうか?
家庭によっては、それこそ最高の権力を振るっている主婦もいそうです。

そんな俺様主婦が社会に出ると、様々な場所でトラブルを引き起こします。
スーパーやレストラン、PTAなど…。
パートに出ようものなら、職場で我儘な自己主張をし、まわりからひんしゅくを買ったり…。
でも、本人は全然気がついていないのです。
それどころか「私がこんなに一生懸命やってるのに」と不満をもつほうが
多いように見受けられます。

きっと長く主婦をしているうちに、自分の物差しでしか、物事を見られなくなるのでしょう。
PTAの役員などをすると、そういうタイプの人が何人もいて
必ずといっていいほど揉め事が起こります(苦笑)

自分の意見だけを言いたい放題で、人の言う事など聞く耳をもっていません。
「私ほどみんなのことを考えている人間はいないわ」などと思っていたりもします(笑)
自分の感情を爆発させて怒ったり騒いだりして、まわりに心配をかけたあげく
騒いだ本人はケロリとしているような、自己中心的な人もいます。

そんな時思い出すのが、アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」という小説。
これは、彼女がメアリ・ウェストマコットという名前で発表した、
ミステリーではない恋愛小説なのですが、大変面白くて印象深いものです。

主人公のジョーンは 夫と娘のいる中年の女性で、清く正しく美しく、
今だに若々しくボランティアに励み表面理想的な母で妻を演じています。
でも、人の心の深くを思いやることができず
夫とも娘とも友人とも表面的な付き合いしかできません。
彼女は自分の見たいことしか見てこなかったのです。

人は自分自身の本当の姿をわかっていない。
この物語では、自己満足というものののおぞましさが余すところなく描かれています。 
でも、ヒロインのジョーン・スカダモアは決して不幸ではないのです。
そう、少なくとも彼女の世界では。 
彼女の罪と不幸をもっとも良く知り、そして一番不幸なのは彼女の夫でしょう。

その彼女がとあることから砂漠のホテルに閉じ込められ、
生まれて初めて自分と向き合います。
何日も何日も一人でいると考えることしかすることがありません。
すると夫や娘や友人たちの今まで自分が見ようとしなかったところが見えてきました。
彼女の信じたくない事実が…。

彼女は、自分が今までいかに自分のひとりよがりな自己満足のために、
家族の思いを犠牲にしていたかに気づき愕然とし、
自分の独善的な生き方を反省します。
が、結局家に戻ったジョーンは、また元の生活に戻ってしまうのです。

私がこの小説を読んだのは、かれこれ20年ほど前だと思いますが
読み終わった時には、なんともいえない空しさと脱力感で、がっくりとした覚えがあります。

人間とはなんと自分に都合の良い弱い生き物なのでしょうか…。
今でも、何かあるたびにこの小説を思い出し、ジョーンのようにはなるまいと
自分を戒める私です(苦笑)

しかし、世の中には何と多くの「ジョーン」がいることか…。
「幸せ」というものが、いかに砂上の楼閣かということを思い知らされます。

2004/03/13 (SAT)


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