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「ちいさいモモちゃん」


松谷みよこさんの名作「ちいさいモモちゃん」は、
私が初めて買ってもらった絵本以外の「本」だ。

確か、幼稚園か小学校1年の頃だったので、初版の時だったのだろう。
帯に「小学校1、2年生向き」と書かれていて、
ちょっとおねえさんになったような、大人の気分を味わったものだった。

私はこの本が大好きで、何度も何度も繰り返し読んだ。
モモちゃんを自分に置き換えて、空想にふけったりもした。
ネコのプーや、にげだしたニンジンの話、
そして、モモちゃんが怒って電車に乗って空に行ってしまう話には、
雲のおいしそうな描写に、自分も雲を食べてみたいと真剣に思った。
だが、旅芸人のごとく転勤続きの我が家では、
その本は、いつの間にか誰かにあげられてしまったようだった。

私は、大人になってからも、
もう一度「モモちゃん」が読みたいとずっとずっと思っていた。
そうしたら、あるとき、文庫本になっている「ちいさいモモちゃん」を見つけたのだ。
しかも、シリーズものになっていて
「モモちゃんとプー」「モモちゃんとアカネちゃん」
「ちいさいアカネちゃん」「アカネちゃんとお客さんのパパ」「アカネちゃんの涙の海」と
他に5冊もでているではないか。
私は6冊を全部買って、貪るように読んだ。

そして、子どもの頃には全然気がつかなかった、モモちゃんの家庭のことがわかった。
私の母は専業主婦で、昭和40年当時は働いているお母さんのほうが少なかったと思う。
でも、モモちゃんのお母さんは働いていて、モモちゃんは「保育園」で育った。
おまけに、妹のアカネちゃんが生まれた後、パパとママは離婚してしまう。
母子家庭になったモモちゃんたちとプー。そしてお客さまで会いに来るパパ。
この本は当時の最先端をいっていた本だったのだ。

大人になって改めて読み返すと、色々なことがわかるものだ。
子どもの頃に読んだ無垢な感動とはまたちょっと違い、
私は、モモちゃんのお母さんやお父さんに感情移入してしまい、
妙にほろ苦い感覚を味わったのだった。
そして、自分が年をとったことを感じずにはいられなかった。
やはり子どもの本は、子どもの頃に読むのが一番なのだと…。

その後、私も母になり、迷わず息子に「ちいさいモモちゃん」を買い与えた。
昭和40年当時と全く同じ装丁のその本を見たとき、
子どもの頃の懐かしい思い出が胸に押し寄せてきて、
なんともいえない切ない気持ちになった。

息子がどういう感想を持ったのかは、よく分からないが(笑)
私にとって「ちいさいモモちゃん」は、
やはりいつまでも大切な思い出の一冊なのである。

2004/06/21 (MON)

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