fc2ブログ

Welcome

Atelier Iceberg Weblog

ARTICLE PAGE

宙組東京公演・その1「維新回天・竜馬伝!―硬派・坂本竜馬III―」

  • CATEGORY宝塚歌劇
  • PUBLISHED ON2007/ 01/ 17/ 23:31
  • COMMENT0

1月16日(火)、かしちゃんこと、宙組新トップ貴城けいさんのお披露目&サヨナラ公演を観てきた。
まずは、お芝居の感想から。

ええと、どうも私は、イシダ作品との相性があまりよくないようで…。
いや、長い目で見れば結構好きな作品もある。
「銀ちゃんの恋」とか「誠の群像」とか…。
駄目だったのは「猛き黄金の国」と「傭兵ピエール」、「青い鳥を捜して」も駄目だったなー。
イシダくんそのものは、愛すべきセンセイだと思うし、楽しそうな方だなーと思うのだが。

私は根っからの少女趣味な人間で、少女マンガと宝塚とロックを友として育ち
少年マンガや野球・サッカー・格闘技など、
一般的で健康な男子の好むものへの興味&知識&理解が皆無なので、
きっとああいう「男が好む世界」的イシダ作品が性に合わないのだろう。

公平な目で見て、イシダ作品は、宝塚を知らない一般の観客が観ても面白い作品だと思うし、
わかりやすさを第一とした大衆娯楽作品が多く、団体客には受けるとも思う。
彼の作品が「宝塚歌劇の作品」じゃなければ、私もそれほど拒否反応を起こさないのだが、
どうも、あのオヤジなギャグセンスとセクハラっぽい台詞が、カンに触るのである。

別に宝塚作品すべてが格調高く芸術的であれというわけではない、
肩の凝らない楽しい作品は私も大好きである。
ヴィスコンティも好きだが、クドカンも好きな私である。
ただ、その笑いの質が問題なのだ。

「まあ、そんなに目くじら立てなくたって。どうせお芝居なんだし」
と言う人も多いと思うけれど、どうもね。
外の舞台なら全然気にならないし、むしろ好きなんだけれど(っておい、苦笑)。
宝塚でやられるというのが、きっと駄目なんだろうな。
「若く美しいタカラジェンヌに、どうしてこの台詞を言わせるのか、イシダ!」と…。

…と、ここまでボロクソに書いてしまったが、いいところも少々。

イシダ作品は、コメディタッチの芝居が多く、笑いの中にホロリとさせる場面も織り交ぜ
そういう意味では、観劇後に明るい気持ちになれるものが多い。
登場人物が多いのも特徴で、それぞれ個性的なキャラに味付けしてあるので
下級生まで役がつき、演じる生徒は楽しいと思う。
ただ、登場人物が多いので、どうしても一人一人の書き込みが浅くなるのは否めない。

それでも、主役級のスターにとんでもない役をつけて、新たな一面を引き出したり、
スターの個性を生かして、一層魅力的に見せたりという術は長けているように思う。
ノンちゃんの銀ちゃん&コウちゃんのヤス(銀恋)とか、ノルさんの山南(誠の群像)など、
思い出に残る名演技も多い。


さて、今回の「維新回天・竜馬伝!」であるが
ストーリーは、ある程度の幕末の歴史を知っている日本人には分かりやすいし、
ステレオタイプのキャラが多いので、ぼーっと観ていても大丈夫である。

私的には、前作「青い鳥を捜して」よりは幾分良かったかも。
「布団」と西郷サンのテクニシャン発言には、ちょっと引いたが、まあイシダ比ってことで(笑)。

まずは、かしちゃん=竜馬。
竜馬というと、どうしてもみきちゃんの当たり役というイメージがあったのだが、
いやー、もう全然違う味付けで、さすが。

出会う人々すべてを、その人懐こい笑顔で魅了してしまう男。
明るく美しく颯爽として、なにものにも縛られず、風のように自由。
そして、その中に潜む儚さや脆さ。
ただひとり、遥か遠くを見つめる視線に感じる孤独。
こんな竜馬って、今までいただろうか。

おなじみのイシダギャグも、かしちゃんがやるとお茶目に見えるから不思議だ。
私は特に竜馬ファンではないが(どっちかというと佐幕派)、
こんな竜馬なら、るいーずお竜ならずとも付いていきたいと思ってしまう。

そして、かしちゃんと同時退団のるいちゃんのお竜。
私はどうもあのアニメ声が苦手なのであるが、
竜馬に対するいじらしいまで愛が、とても可愛らしかったのが良かった。

まだ男役だった月組時代、「LUNA」の東京公演で女役をやったときに
あまりの素晴らしさに「この娘役さんは誰?」と色めきたったものだが、
本当に立派な娘役トップになったと、なんだか親心で見てしまう。

かしちゃんのるいーずに対する視線がとても温かく優しくて
愛情あふれるこのトップコンビで、もっと多くの作品を観たかったと
思わずにはいられない。本当に残念。

さて、次期トップのタニちゃんの中岡慎太郎。
あまりなじみのない登場人物だが、竜馬を支える熱い男を熱演。

相変わらず美しくて若々しいスターさんだ。永遠のアイドルという感じ。
この人は、無理に大人の男を創らずに、この路線のままで行ったほうがいいのではないか。

ビジュアルも現代的で宝塚くささがあまりないので、
宝塚が苦手という方にも受け入れられやすいと思う。
新ファン開拓には、こういうタイプのスターがいいのかもしれない。

ただ、まだかなり歌に不安が残るので、その辺りがどうも…。
どうせ下手なら、マリコさんレベルまで行くとか。
なんか中途半端に音がゆれると、耳に悪いので…(笑)。

これからは、宙組主演男役という重責を担うわけだし、
花も実もあるトップになるように、ぜひぜひ頑張って頂きたい。

花組から移籍のとむくん。今回の大収穫。
花組時代は、路線男役ながら、決して役に恵まれていたとは言えないし、
キャラも、どちらかというと子犬キャラに偏っていたように思うが、
今回、出番こそそう多くないが、剃刀のように切れ味の鋭い男・一橋慶喜で、
新たな魅力を発見。

美しく凛々しく、そして、知性と精神の高さを併せ持った男。
生まれながらに人の上に立つ者の風格も十分。
とむくんが、ここまで舞台全体を支配する力を持った人だったとは…。
日本の将来の為に、「徳川最後の将軍」という汚名を自ら背負って、
幕府の幕引きを決断する男の引き際を見事に演じた。
うん、宙組の将来は安泰よ。

続いて、やはり月組から新加入のみっちゃんの桂小五郎。
実力派だけあって、安心して観ていられた。
出番もかなり多くて、3番手がやっても良い役なのではないだろうか。

ギャグシーンも頑張って飛ばしていたが、真面目なシーンとのギャップがね。
でも、この人の芝居には心があるので好き。
このまま、まっすぐに育って欲しいなと思う。

武市@ともちんは、今回ちょっと出番少なく辛抱役。
それにしても大きい人だなあ。
その大きさが、「大味」にならないようにと願う。
大きいと目立つので、どうしてもそう見えがちになるのは気の毒かも。

陽之助@七帆クンはおいしい役。
竜馬への愛情たっぷりなところが微笑ましい。
沖田@ちぎ、売出し中ですね。爽やかで良かったのに、後半の駄々っ子ぶりは、
イシダ脚本のミスなのでは。(なぜにあの展開?)

娘たちでは、お蝶@美羽あさひちゃんがしっとりしていて良かった。
美桜ちゃん活躍だったけれど、アリスちゃんは?

あとは、勝@ともみさん、西郷@すっしー、万次郎@まりえったの三人が
達者な演技で舞台を引き締めてくれた。
特にすっしー、メイク&体型補正も大健闘。
まりえったの誠実な演技には、いつも心が温かくなる。大好きだ。
寺田屋の女将@クニさんも味があってよい。
下級生が多く、日本物が初めてという生徒さんもいる中、本当にこういう人たちは貴重。

日本物は、着物の着こなしや所作などの決まりごとも多いので、
定期的にやらないと身に付かない。
今回もかなりヤバイ下級生を何人も目撃した。
うーーん、求む・日本物巧者。
そして、面白い日本物の上演を!

とりあえず、お芝居の感想はこんなところだろうか。
ショーについては、また別ページに。

2007/01/17 (WED)

関連記事

0 Comments

Leave a comment