専科&雪組「花供養」(日生劇場)
掲示板でも何度か書いたけれど、一応総括…ということで(笑)
宝塚歌劇なのに、フィナーレはおろか、歌も踊りもBGMもない、芝居だけの舞台。
しかも、最近とみに若者離れが進んでいる日本物…。
出演者も11人と少なく、日生劇場での上演が発表されたときから
「興行的にみて、大丈夫なのだろうか?」という不安の方が先に立ってしまう作品だった。
全部で3回の観劇だったが、そのくらいの回数が丁度よい…という印象だった。
それ以上見ていたら、ちょっと飽きてしまったかも(すみません)
作品としてはとてもよく出来ていると思ったし、
地味ながら、セットも安普請じゃなかったし、季節感もありよかったと思う。
ただ、主役の後水尾天皇が、観客の共感を得られやすい役柄じゃないところが
演じる役者にとっては、なかなか難しいだろうなあと感じた。
轟さんは、初日近くは、武士キャラが前面に出てしまっていて
天皇ではなく殿様という感じであったけれども、次に観た楽近くには
かなり抑えた演技で、天皇をあらわそうとしていたように思えた。
ひとつひとつの台詞、所作も丁寧で、この作品に対する意気込みを感じさせた。
ただ、やはり一言で言うと「ニンに合っていない」というのが否めず
もっと彼女に合った役をさせて欲しい…と思ってしまった。
まあ、瀬奈じゅんに「エリザベート」をさせるくらいの劇団だから
この程度は、なんてことないのだろうが(苦笑)
私が観たい轟悠はこういう役じゃないのに…と切に感じてしまった。
次回の雪組公演「青い鳥を探して」に是非とも期待したい。
今回、なんと言っても美味しい役は、白羽ゆりちゃんのお与津御寮人だ。
後水尾天皇の愛を一身に受けながら引き裂かれるこの役は、
観客の同情を一身に集め、目立つ反面、
もし失敗したら惨憺たることになるところだが、
となみちゃんは、心を感じさせる演技で泣かせてくれた。
関西出身の友人によると「ちょっと京言葉があやしかった」そうだが
関東人の私には、全然わからなかった(笑)
そして、その次に目立つ役といえば、やはり音月桂ちゃんの近衛信尋だろう。
後水尾天皇の弟で、お与津御寮人を心密かに慕いながらも、
二人の為に尽くすという役柄。
台詞も見せ場も多く、若い桂ちゃんがどこまでやれるか…と思ったが、
十分にその役割は果たしてくれていたと思う(ファンモード・笑)
初日近くの観劇では「ちょっと若いかな?」と感じる場面もあったが、
2回目以降は、かなり落ち着きを感じさせるようになっていた。
本当に、将来が楽しみな人。
このまま、こじんまりとまとまらずに、もっと飛躍して欲しい。
汝鳥怜さんの春日野局も、貫禄がありなかなかの名演だった。
ただ、欲を言えばもう少し高潔な感じというか、
品格があるともっと素晴らしかったと思うのだが、ちょっと贅沢?
そして、ハマコちゃんこと未来優希の白川のおよし。
ただ一人の庶民の役で、物語の時代背景説明の役も兼ねていたが、
長い台詞も難なくこなし、さすが実力派…を感じさせた。
お化粧もとても綺麗で、知らなかったらハマコちゃんだと気づかなかったかも(笑)
短い出番だったが、山科愛ちゃんの中宮・和子も品があり、
政略結婚で嫁がされて来た正室ながら、無垢な美しさと賢さを感じさせた。
お与津御寮人への「ご一緒に参りましょう…」には思わず涙してしまった。
全体的な印象として、誰一人下手な人がいない舞台って、
なんて安心して観られるのだろう…というのが一番だった(笑)
よくバウ作品などで、若手のスターが主役だと、
どうしても脇役の若さや未熟さが目に付いてしまい、
脚本が良くても「ああ、もったいないなあ」と感じてしまうことがあるのだが、
そういうことが一切なかった。
他の専科・雪組の出演者たちも、それぞれ自分の持ち場をしっかり守って、
目立ちすぎず、だが自分の実力はしっかりと出していたように感じた。
きっと普段宝塚を敬遠している演劇ファンが観ても、
納得してもらえるような、「芸術の秋」に相応しい、そんな舞台だったと思う。
ここのところ急に秋めいてきたが、あの静かな舞台を懐かしく思い出す。
観客の入りは今ひとつだったようだが、舞台としては成功の部類に入る
なかなかの佳品だったと思う。
2004/10/03 (SUN)
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