東宝ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」(東京芸術劇場)
- CATEGORYミュージカル・歌舞伎など
- PUBLISHED ON2004/ 04/ 09/ 23:13
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初舞台、じゃなかった、初めて観た舞台(児童向けなどを除いて)が
中学生の時の「宝塚歌劇」だった私は、宝塚以外の舞台はあまり観たことがなかった。
「劇団四季」は、友人がファンだった事もあり時々観ていたが、
東宝ミュージカルは「レミゼ」以外は、「風共」「マイ・フェア・レディ」
「42nd.ストリート」など、宝塚OGの出演したもの程度しか観たことがなかった。
轟さんを熱烈に追いかけていた頃は、お金も暇もなかったし(笑)
そんなわけで、宝塚以外の舞台をよく観るようになったのは、
宝塚ファンとしても何となく落ち着いて舞台を観るようになったここ2年ほどである。
なので、この有名なミュージカルも今回が本当の「初見」。
あの森繁のテヴィエも、友人が絶賛していた西田敏行のテヴィエも観ていない。
ストーリーも、なんとなくあらすじだけ知ってます…というど素人なので、
少々ズレた感想かもしれないけれどお許しを…。
というわけで、市村正親さんのテヴィエにワクワクしながら着席。
私はこの池袋にある「東京芸術劇場」が大好きだ。
といっても、中ホールでしか観たことないのだが、コンパクトでとても舞台が観やすい。
ロビーも明るくていい感じだし。
川口リリアホールと並んでお気に入りである。
さて「屋根の上のヴァイオリン弾き」は、帝政ロシア時代(1905年)の
ロシアの寒村・アナテフカを舞台に、テヴィエ(市村正親)という乳売りの男と
その妻ゴールデ(夏木マリ)、そして5人の娘たち(香寿たつき・知念里奈・笹本玲奈・
宮野友里加・村上由香)というユダヤ人一家の生活ぶりと、
彼らを取り巻く人々(娘たちの恋人・ユダヤ社会の人々・ロシア人たち)が織りなす物語だ。
ユダヤの人々は、彼らだけの社会をつくり伝統を大切に生活をしている。
でも、村を仕切っているのはロシア人たちで、彼らユダヤ人たちは、
「屋根の上のヴァイオリン弾き」のように、足元も危なっかしく何とかバランスを
取りながら生きているのだ。
力と金を持っているロシア人たち。
ユダヤの人々は彼らからは蔑まれてはいるが、それなりに棲み分けをしており
とことん仲が悪いわけでもない。
そんなユダヤの人々の心の拠り所は、宗教としきたりだ。
娘の結婚相手は父親が決め、母親は娘に家事を教える。
だが、娘たちはそれぞれ勝手に恋人を作り、テヴィエを悩ませる。
しきたりと叫びつつも、ついつい娘幸せのために結婚を許してしまうテヴィエに、
観ているこちらも思わず泣いたり笑ったり…。
ちょっと昔の日本のホームドラマを思い出させる(笑)
市村さんは、まさに自由自在の演技で、家長として威張りつつ、実は恐妻家で
娘にはちょっと甘い父親役が秀逸。
神様に語りかけるシーンがたびたび出てくるが、
観ていて本当に引き込まれてしまうほど…。すばらしい「パパ」だった。
そして妻のゴールデは夏木マリさん。この人がまた上手い!
しっかり者で、娘を金持ちに嫁がせるのが一番の幸せと考えていて、
ああ、母親ってこうなのよねぇ…と、思わず感情移入(苦笑)
テヴィエとの「愛してるかい?」「疲れすぎだよ。早くベッドでさっさとお休み」(笑)
というくだりの歌が、とても良かった。
やはり女は現実的?(苦笑)
そして長女ツァイテル役の香寿たつきさん&その恋人モーテル役の駒田一さん。
たーたんは、しっかり者の長女&娘らしい初々しさで花マル!
可愛かったツァイテルが結婚して子供を産んで、
しっかり者の母になっていくところもなかなか…。
「レミゼ」で素晴らしいテナルディエを演じた駒田さんは、今度は打って変わって
気が弱くさえない仕立て屋の青年。
これがまた、情けないほど意気地なしでまたまた名演。
大いに笑わせてくれた。
本当はすでに肉屋の後添えの約束をしてしまったテヴィエに、
何とか結婚させてくれと必死に懇願するツァイテルとモーテル。
困り果てながらも、ついに娘の願いを聞き入れるテヴィエ。
このあたりの流れと、ユダヤのしきたりにのっとった結婚式などは
明るくてとても楽しい場面だった。
だが、それもつかの間、結婚式の最中に警官が乗り込んできて、
その場を滅茶苦茶にしてしまう。
「これも役目なんだ…。すまないな…」とそっと謝るロシア人の警官は
石波義人さん。この巡査部長とテヴィエの不思議な友情も、
なんとももの哀しくてやるせなかった。
民族や宗教が違うということは、ここまで重い事なのだ。
それは、今の中東やボスニア紛争・コソヴォ紛争などを見てもわかることだ。
「平和ボケ日本人」と言われても仕方ないよなあ…などと思ってしまう。
その他にも、蜂起に失敗しシベリア送りになった恋人を追っていく
次女ホーデル(知念里奈)や、民族も宗教も違うロシア人青年と恋に落ちる三女・チャヴァ
(笹本玲奈)の二人と、それを見守る市村パパの悩み戸惑う姿が、最高だった。
最後は、ユダヤの人々は帝国政府の方針で、住処を追われて散り散りになっていくのだが、
それでも、いつか再会を…と誓いながら、たくましく生きていく様に、
「サンライズ・サンセット」の「時めぐり 喜び 悲しみを 乗せて流れていく」という歌詞が
心に染みて胸がいっぱいになった。
この作品の初演は1964年だそうだが、良い作品はこうして時がめぐっても、
語り継がれ演じられていくのだなあ…としみじみと思った。
できることなら、またこの作品にめぐり合えますように…。
2004/04/09 (FRI)
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