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“俺の生き様” 花組「二都物語」(日本青年館)

  • CATEGORY宝塚歌劇
  • PUBLISHED ON2003/ 10/ 27/ 22:11
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自分の命と引き換えにしても守りたいものって何だろう…。

日本青年館で公演中の花組「二都物語」を観劇した。
実のところ、私は作品そのものにはあまり期待してなかった。
太田作品には、昨年の「ホップスコッチ」でかなりテンション落ちていたし、
ここのところ、「樹里咲穂コンサート」「十二夜」と面白い舞台を
連続で観たので、そうそう面白い作品も続かないだろう…などと斜に構えている節があった。
まあ、瀬奈じゅんを観られればいいや…という感じだったのだ。

が…蓋を開けてみたら、うん、結構いいかも…。
まず、眠くならなかったし
(私は大好きなスターが出ている作品でもつまらないと眠くなってしまうのだ)
キャラクターに素直に感情移入できた。(これが一番)
「この人っていったい…?」と突っ込みたくなるキャラもいなかったし
腹の立つ無神経な台詞もなかった。

なんて書くと、なんか私の最低ラインっていったい…という感じだが、
上記の基準をクリアできていない作品も多々みかけるので…(苦笑)

難を言えば、何故シドニーがそこまでルーシーを想うのか…という部分に関する
書き込みが不足していることと、二幕で明らかになる事実に対する伏線が
分かり辛い…ということだろうか?

また、ルーシーとチャールズが、実は仇同士だったというドラマチックな事実を
もう少し生かせる方法もあったんじゃないだろうか…と感じる。
「第2の訴状」のシーンがとても良かっただけに、ちょっともったいない感じがした。


でも、なんと言ってもこの作品の立役者は、主演の瀬奈じゅんだろう。
人生に失望し、投げやりに生きている弁護士・シドニーが見つけた一筋の光、
それがルーシー(桜乃彩音)だった。
そのルーシーの夫・チャールズ(彩吹真央)がフランス革命の混乱の中で逮捕され、
名門貴族の出身というだけで死刑の判決を受ける。
シドニーは、ルーシーのためにチャールズを助け、自分が身代わりとなって
断頭台の露と消える。

やりようによっては、ただのストーカーになってしまいそうなシドニーを
瀬奈くんは文芸作品にふさわしい気品を持って演じきったと思う。
シドニーの行動に押し付けがましさがなく、死にいたるまでの行動も
ある意味ビジネスライクに、気迫を保ちながらも淡々と推し進めていったところが、
かえってよかったのではないかという気がした。
あの場面で、くどくどと陳腐なお涙頂戴的演技をされたら、
ひねくれ者の私など、白けてしまったかもしれない。

刑場に向かうラストシーンも、人によっては物足りないかもしれないが
私は覚悟を決めて淡々としていたのが、かえって泣けた。

瀬奈くんのシドニー・カートンは、ルーシーのために死んだというよりは
自分の本当の生き方を見つけ、満足して死んだのだ…という感じがする。
人生が何一つ思い通りにならず、悶々と生きていたシドニーが、
やっと自分の思いを貫き通したのが、
愛する人の幸せを守るために死ぬという行動だったのだと…。

シドニーは命を失ったけれども、もっど別の大切ものを得たのかもしれない。
自分の存在意義、アイデンティティというものを。
だから、ああまで晴ればれとした表情で死を迎えることができたのだ。
うーーん「俺の生き様」とは、このことか…。(あるいは死に様?)
瀬奈くんのシドニーには、そんな潔さがあった。

もちろん、男役としての仕草や身のこなしの美しさは、目を見張るほど。
本当に成長したんだこの人は…と、つくづく思ってしまった。

酔っ払って酒場でくだをまき、ワインのコルクを口で開けて吐き捨てる演技など
その男っぽいセクシーさに、ドキドキしてしまった。
(しかし、歯が丈夫な人だ…笑)

職場(弁護士なので法廷)での、やる気のなさそうな仕事ぶりや
チャールズに絡む場面など、思い通りに行かない人生への憤りや
自分の内に向かう暗い怒りなど、
現代人にも通じる閉塞感のようなものを感じて、切なかった。

もしかしたら、コテコテにしつこく、どろどろとした役で
やりようによっては、かなり嫌味なキャラになってしまったかもしれないのに
瀬奈くんは、そんな人物を美しく品よく演じていた。

宝塚の男役に私が一番求めるものが、美しさと品のよさ、そして清潔感である。
もちろんセクシーなのは大好きだが、それが卑猥になってしまっては駄目で、
その微妙な一線を越えない部分で観客を陶酔させてもらいたいのだ。
やはり「清く正しく美しく」は大前提。


うーーん瀬奈じゅんを語っているだけで、時間切れになってしまった。
その他のキャストは、また明日ね…。

2003/10/27 (MON)


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