ドキドキ!バックヤードツアー♪
昨夜からの激しい風雨、皆様お住まいのところは
大丈夫ですか?
我が家近辺は、7時半現在、ようやく風がおさまってきました。
今日は、母の病院の付添いがあるのですが
JRが遅れているようなので、早めに出ます。
水害やがけ崩れが心配されますが、
大きな被害など出ませんように。
さて、9月のことなのですが、少し珍しい体験をしてきました。
東京国立博物館のバックヤード・ツアーです。
上野にある東京国立博物館は、明治5年に創設された、
日本で最も伝統ある博物館ですが、
その文化財保存と修復現場を見学してまいりました。
貴重な体験は、まず入場から。
正門を通り過ぎ、ふだんは関係者しか入れない
西門の通用口から建物に入ります。
劇場の楽屋口から入るような感じですね(笑)。
抽選で当たった幸運な見学者は100名ほど。
はじめに、平成館内の大講堂で研究員の方から
文化財の保護と修復についてのお話を伺います。
その後、10人ずつのグループになり
バックヤードツアーが始まります。
最初に本館17室にて、
修復に使う様々な用具や材料、技術についての説明を聞き
いよいよ「関係者以外立ち入り禁止」の扉の向こうにある修復現場に。
(当然のことながら、撮影禁止なので画像がありません。
ご了承くださいませ。)
本館の地下に降りたのですが、
エレベーターがまたものすごく大きいんです。
まさに文化財サイズ!
まずは、実験室へ。
名前は実験室ですが、理系な雰囲気はありません。
それほど大きくない部屋には、ところ狭しと色々な道具が。
作業用の机の島があり、4人の研究員さんが作業中でした。
皆さん若いです。
たぶん30代くらいでしょうか。
文化財修復=年配の男性と勝手にイメージしていましたが
全然違っていて驚きました。
中に、金髪のめっちゃハンサムなお兄さんがいてびっくり。
スウェーデンから研修に来ている方だそうで、
古い和綴じの本を分解して、綴じなおしていました。
海外の美術館や博物館にも日本の文化財があるので、
こうして研修に来られるのかも。
説明してくださった研究員の方も若い女性。
修復が終わったばかりの額縁を、
どこをどう直したのか細かく説明してくださいました。
中に入っている絵は、黒田清輝のもの(!!)。
空気に触れて絵が傷まないように、
見た目をなるべく変えずに裏側を補修したそうです。
他にも、祇園祭の鉾の一部分が置いてありびっくり。
こういうものも修復するのですね。
みなさん、それぞれ特定の分野のエキスパートで
やっている作業も様々なのですが
中に、見慣れた作業をしている女性がひとり。
マットに置いた厚紙を大きなカッターで切っています。
机の上には、見たことあるような形の布張りの箱がいくつも。
あれってどう見てもカルトナージュだよね……?
と思っていたら、
古い洋書を保存するための箱を作っているのだとか。
やっぱりカルトナージュだ!
ただし、厚紙も糊も布も特別なものだそうです。
紙は中性紙、箱に貼る布は、綿と麻でできているとか。
保存する本の大きさに合わせた箱を作っているそうです。
そして、中に入る本は、
シーボルトが日本に持ち込んだという貴重な洋書でした(!)。
さて、別のお部屋に移動して、
今度は屏風の修復の現場と作業風景を見せて頂きました。
こちらも、若い男性と女性が二人ずつでした。
見せて頂いたのは、狩野益信(洞雲)の「年中行事図屏風」です。
江戸時代17世紀のもので、六曲一隻・紙本金地着色。
(↓頂いた資料からお借りしました)

応仁の乱以前の祇園祭の山鉾巡行列と、
それを見物している町屋の人々が描かれています。
日本にいくつかある「洛中洛外図」と同様の価値を持つ
とても貴重な作品だそうです。
表面についた汚れの取り方から
修復の方法まで、実物を前に説明をしていただき感激。
屏風の修復も、本当に細かい作業の連続で、
時間がかかるようです。
これから1年かけて修復をし、
その後1年~1年半時間を置いて状態を観察、
ようやく博物館でお披露目されるとか。
修復を終えた屏風が展示されるときは
是非見に行きたいと思いました。
東京国立博物館では、
日本を中心に東洋諸外国の文化財を収集・保管していて
その数は11万件を超えるそうです。
これらの膨大な数の文化財のうち
展示されているものはごく一部で
ほとんどはバックヤードで大切に保管されています。
日本や東洋の美術工芸品は、大変デリケートで痛みやすいので
東京国立博物館では、文化財に応じた劣化・損傷の診断と修理、
保存環境の改善などにとり組んでいるとのことです。
一番大切なことは、文化財の状態を知ることたそうです。
その文化財が受け継がれてきた歴史を調べ、
最新技術を駆使して、目には見えない内部構造や材質を分析し
カルテを作成します。
そして、文化財の健康状態を知り、
その文化財に最良と思われる保存方法を決めるのだそうです。
それは、最少限度手を加える対症修理から、
解体を含む本格的修理まで様々だとか。
印象的だったのは、研究員の方が
自分たちは文化財の医者だとおっしゃっていたことです。
文化財の「診断・治療・劣化予防」は、まさしくお医者様ですよね。
今回、文化財保護について色々お聞きしましたが
印象に残ったのが、収蔵品の予防保存の考え方です。
劣化のスピードをいかに遅くするかということが大切で
修復というのは最後の手段なのだとか。
そして、元の姿を崩さないよう、修復も最小限に留めるそうです。
午後1時から始まって夕方5時までの濃密なツアー、
館内を案内してくださった方
修復の実際を説明してくださった方、
研究員の皆さんがとても熱心で、
本当にこの仕事が好きなんだなと感じました。
お若いけれど、プロフェッショナルの気概を感じる方々でした。
色々ご苦労もおありでしょうけれど
こんな風に仕事に打ち込めるのが少し羨ましかったです。
私は、生まれ変わったら
工芸品の職人になりたいと思っているのですが
文化財の修復師もいいなーと思いました。
箱作りなら得意ですが、ダメですか?(汗)
今回は時間がなくて、展示の方は駆け足だったので
改めてゆっくり見学に行きたいと思います。
芸術の秋にふさわしい貴重な体験をさせて頂きました。
お世話になった皆さま、本当にありがとうございました♪
※おまけ
そうそう、今回初めて知った東博トリビア。
常設展示の他にも、特別展を行っている東京国立博物館ですが
今までの特別展の中で一番入場者数が多かったのは
1974年(昭和49年)の「モナリザ展」だそうです。
その数なんと150万人!
私もその中のひとりです(笑)。
当時中学生だったのですが、母と一緒に行きました。
上野動物園のパンダ以上の大混雑でした(汗)。
懐かしい……。
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